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事件の概要

この事件は、ギランバレー症候群という神経系の難病を患った男性、川上征之さん(51歳)が、大阪地裁に地位確認を求める申し立てを行ったことに関するものです。

主な内容は以下の通りです:

  • 川上さんは2019年にギランバレー症候群を発症し、その後一時的に車いす生活を余儀なくされました。
  • 2022年には課長職に昇格しましたが、2023年に病気が再発しました。
  • 療養後の復職時に会社から降格と配置転換を告げられ、さらに未経験の内勤業務に異動となりました。
  • 会社側は降格の理由として「障害や休職リスク」を挙げ、上司からは「手の動かないやつは戦力にならない」とも言われたとされています。川上さんは、「働く意志や能力があるのに働けない苦しさ」を訴え、障害者が働きやすい環境づくりを目指しています。

川上さんの訴えに対する会社側のコメントは掲載されておらず、詳細な内容についてはまだ明らかになっていません。

企業の人事裁量権は広く認められている

一般的に、会社が人事評価を行うにあたっては、広い裁量権があると解されています。

それは、過去の判例の「労務の質をどう評価するかの自由が労務の提供を受ける側にあり、この評価が受け入れがたい労働者には退職の自由の保証するというのが、雇用を契約として構成する民法の建前である」(安田信託銀行事件)というのが根拠になっています。

特に、日本の様な長期雇用システムにおいては、経営者が、労働者の職業能力の発展に応じて、労働者を各種職務やポストに配置しておくことが予定されており、会社組織の中でどのように労働者を活用し、コントロールしていくかについての裁量を有しているとされています(バンク・オブ・イリノイ事件)。

しかしながら、人事評価にあたり、会社は何の制約もない完全な裁量権を有しているわけでもありません。

人事評価の結果として、賞与の支給額を算定したり、昇給・昇格の判断材料にするのですが、それらの決定については均等待遇の原則、男女の機会均等、同一労働同一賃金といった労働諸法令の規制を受けるためです。

病気と人事評価の関係

病気を理由に人事評価を下げることが人事権の濫用にあたるかどうかという事についてです。

その病気が一時的なものでいつかは治る見込みがあるとすれば、一時はパフォーマンスが落ちてもまた戻る見込みは十分に期待できるわけですから、業務が一時的に滞ったとして、それだけで人事評価を下げて降格や配転を行うというのは不合理といえます。

ただ今回の事件のように、その病気の性質上長期に及ぶ可能性が高く、その労働者個人の業績や勤務態度、業務遂行能力等に長期にわたって及ぼすと想定される場合は、これを考慮して評価することも許されると思われます。

障害者雇用促進法からの視点

今回の事件は、被告の方がギランバレー症候群という重い病気にかかり、障害を持ってしまった事も考慮しなければなりません。

(1)差別禁止

障雇法上の「障害者」は、身体障害、知的障害、精神障害、その他の心身の機能の障害のため、長期にわたり、職業生活に相当の制限をうけ、又は職業生活を営むことが著しく困難なもののことをいう、と定義されています(同法2条1号)。

また、事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生の施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取り扱いをしてはならない(同法35条)と定めています。

(2)合理的配慮の提供義務

事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他必要な措置を講じなければならない(同法36条の3)。

このような同法上の合理的配慮の提供義務は努力義務ではなく法的義務とされています。

ただし、合理的配慮の提供義務の例外として、事業主は、自らに過重な負担を及ぼすこととなるときは、そのような措置を講じる義務を負わないものともされています(同法36条の2、36条の3の各但し書き)。

この例外規定を補充する意味で、事業主は、合理的配慮の提供に関して、障害者の意向を十分に尊重すること、雇用する労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上の必要な措置を講じることとされています(同法36条の4)。

総合的な考察

今回の事件は、被告の方が自分の意図しないところで難病にかかり障害者になってしまったケースであり、いわば労働者に責任のない事由によるものであり、それに対し会社側の広い人事権よる降格・配置転換の措置というのは、やはり疑問が残ります。

そして障害者雇用促進法の観点からみても、今回の会社の措置は差別的取り扱いと捉ええることができ、合理的配慮の提供義務があるとも考えられます。

現実的に、事業主の障害者に対する合理的配慮に対しては、障害者雇用納付金関係助成金という制度もあります。

当該制度は、「事業主等が障害者の雇用にあたって、施設・設備の整備等や適切な雇用管理を図るための特別な措置を行わなければ、障害者の新規雇い入れや雇用の継続が困難であると認められる場合に、これらの事業主等に対して予算の範囲内で助成金を支給することにより、その一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることを目的とするものです」とあります。

こういった助成制度を活用しながら、被告の方の職場内での待遇等を守っていくことは可能だと思います。

今回の地位確認申し立て請求が、大阪地裁の方で認められることを願っております。

 

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