経歴詐称がばれた、これは懲戒解雇になってしまうのか・・・


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経歴詐称とは

経歴詐称とは、採用面接や履歴書の提出に際して、学歴・職歴・過去の犯罪歴などを偽って、本当の経歴を隠すことです。経歴詐称は、一般的に経営者と労働者間の信頼関係を壊す、労働契約上の重大な信義則違反とされています。それによって、経営者にとっては、その労働者が持つ業務遂行能力の評価を誤ってしまう恐れがあり、それが会社の賃金体系を乱し適正な人事配置を阻害することにもつながることから懲戒事由となるとした判例もあります(日本農薬事件)。

経歴詐称に対する懲戒処分は、当該詐称がなければ本来労働契約を結ばなかったであろうと想定されることに対してなされるものとして、労働契約を解消させる処分である懲戒解雇や諭旨解雇によるとされていますが、その処分の有効性の判断は、詐称された経歴が会社の秩序を犯すほどの重要なものに限ると限定されています。

西日本アルミニウム事件では、高卒以下の学歴のものを採用する方針をとっていた会社に大卒であることを隠して採用された者について、募集広告では学歴に関する採用条件を明示せず、面接時にも学歴を確認しておらず、また勤務状況も問題なかったことをなどから、当該詐称により会社の秩序を乱したとはいえないとして懲戒解雇を無効としました。

経歴詐称はなぜばれるのか

経歴詐称がばれるのは、多くの場合、その労働者の日頃からの働きぶりから、業務遂行能力の不足や勤務態度不良などについて会社が不審に思い、履歴書などを調べなおした時です。

この際に、過去の経歴に偽りがないかどうか確認するために行われるのが、バックグラウンドチェックです。

これは主に採用面接時に、採用候補者の身辺や経歴に虚偽・詐称がないかを調査することで、入社後に問題を起こしたり、期待を下回るパフォーマンスなどで会社に不利益を与える可能性がある人物の採用を未然に防ぐために行われるものですが、採用後に行われることもあり、これによって経歴詐称がばれてしまうのです。

バックグラウンドチェックで調査される項目としては、

・学歴

・職歴:一般的にリファレンスチェックと呼ばれるもので、履歴書などに記載のある過去に勤務した会社の入退社日・業務内容などについて本人に源泉徴収票の提出を求めたり、過去の勤務先の関係者へ問い合わせたりすることで履歴書などに記載されている情報に相違がないかの確認をします。

・反社会勢力とかかわりがないか

・犯罪歴、破産歴

といったことがあります。

ただし、バックグランドチェックは、個人情報取扱事業者による個人データの利用にあたるので、個人情報保護法が定める規則を守る必要があり、具体的には、下記のとおりです。

・事前に採用候補者にバックグラウンドチェックを行うことを告げて了承を得る

・外部の調査会社を利用するときは、第三者提供についても了承を得る

バックグラウンドチェックを行うには上記のような手続きを経るのですが、採用候補者がこれらを拒否した場合は、採用される可能性は一般的に低くなるため了承せざるを得ないのが通常です。

経歴詐称のリスク

結論から言うと、経歴詐称によってすぐに解雇の処分が認められるわけではありません。

過去の判例では、経歴詐称による解雇が認められるか否かについて、会社が、その労働者のどのような経歴を重視し採用に至ったのかや、詐称の内容や程度、会社の秩序を犯す危険性の程度など総合的に勘案して判断しています。

ただし、解雇が有効となった事案(KPIソリューションズ事件)もあります。

当該事案では、履歴書に同業他社に在職中と記載があったものの実際には短期間ですぐに退職しており、退職事由も普通解雇だったこと、会社が求める特定のシステム開発能力がないにもかかわらず当該能力があると主張したことや、その他に、上司に対する反抗的な態度等もふまえて解雇有効と判示されました。

上記のように、経歴詐称による解雇が有効となるのは、会社が採用にあたって特定の能力やスキルを重視したものの、その能力・スキルに関して詐称がある場合です。特にIT業界によくみられるように、技術的な業務遂行能力を証明する資格の有無や職務経験は、会社にとってその労働者の持つ能力を判断する有力な材料ですから、この点についての詐称は、会社とその労働者の信頼関係を大きく壊す事になります。

また、あまりに悪質な経歴詐称に対しては、民事上の不法行為に基づく会社からの損害賠償請求のリスクもあります。すべての経歴詐称が、ただちに不法行為に該当するものではありませんが、能力やスキルを過大にアピールし賃金の上乗せを認めさせたような場合は、詐欺となり不法行為に当たり、損害賠償が認められるケースもあります(KPIソリューションズ事件)。

前々職の経歴詐称はばれない?

会社は採用する際に、社会保険加入の手続きのため、年金手帳の写しや雇用保険被保険者証の提出を求めます。

この雇用保険被保険者証とあわせて、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書というものがついており、これによって前職の会社名や雇用保険加入歴がわかるようになっています。

また、離職した年と同一年内に再就職した場合、前勤務先から源泉徴収票をとりよせ会社に提出しなければなりません。この源泉徴収票に前職の会社名が記載されています。

ですから、これら入社時に必要な書類からバレルのは前職までで、前々職以前の経歴は通常の手続きからはばれない可能性が高いです。

しかし、会社がその労働者の働きぶりなどから経歴を不審に思い、上記バックグラウンドチェックを行った場合は前々職以前の経歴詐称がばれる可能性は十分にあります。

総合的な考察

昨今の人手不足から、以前では難しかった30代後半~40代半ばまでの転職も、会社側が即戦力を中途採用で求めるニーズが高まったことから、転職市場は活況を呈しています。

その中では、短期離職してしまったケースや、パート等で短期雇用されていた事などを隠したくなることもあるでしょう。例えば、前々職以前で1カ月しか働いていなかった会社Aの職歴を書かずに、その1カ月も含めて会社Bで働いていたと記載して、会社Aの経歴をなくす場合などはバレにくいかもしれません。

上記のような、軽妙な経歴詐称の場合は、仮にバレたとしても会社が求める能力やスキルとの齟齬につながることも少なく、懲戒処分まで至る可能性は少ないかもしれません。

よくあるケースなのが、会社から評価され業務に役立つ経歴ほど詐称したくなることでしょうが、業務への影響が大きいほど、求められる業務遂行能力と実際の能力の齟齬からボロが出やすくなります。

また、経歴詐称が発覚すると、それが軽妙な詐称であったとしても、会社内で一気に信用を失うだけでなく、その後の社会人人生にも悪い影響を及ぼします。

入社後に発覚すれば、やはり解雇に至るリスクはありますし、解雇された後の転職活動において、新たな転職先候補の会社から退職証明書の提出を求められた場合には、どこまでの記載内容が求められるかによりますが、その証明書の記載内容から解雇された事実及びその解雇の事由がばれることもあります。

いずれにしても、経歴詐称はその程度を問わず、ばれたときにその代償として様々なリスクが想定されるため、やはり慎んでおくべきでしょう。

 

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