
メンタル不調で退職になりそう…その後の収入はどうなるのか?
「心の病で長期休職中。このまま退職になるかもしれない…。生活費は大丈夫か?」
――こんな不安を抱えている方は少なくありません。
精神的な不調による退職は、決して珍しいことではなくなってきました。しかし、いざとなると「退職したら無収入になるのでは?」と心配になるものです。
今回は、退職後も受け取れる可能性のある公的支援についてわかりやすく解説します。
退職後も「傷病手当金」は受け取れる?
まず覚えておきたいのは、私傷病で休職中に受給できる「傷病手当金」は退職後も一定期間、支給されるということです。
■ 傷病手当金とは?
健康保険の加入者が病気やケガで働けなくなったとき、給与の代わりに支給されるお金です。休職中に申請し、条件を満たせば最長で1年6ヶ月間、支給されます。
■ 退職後ももらえる条件
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退職前に傷病手当金を受給しているか、受給の条件を満たしていたこと
※「受給の要件を満たしていた」とは、会社を退職する日の前日まで引き続き会社に在籍していた期間(休職期間含む)が1年以上あることです。
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退職時に就労不能な状態が継続していること(主治医の証明が必要)
この2つを満たしていれば、退職後も「被保険者資格喪失後」の傷病手当金として継続支給されます。
※退職後は、在職中に加入していた健康保険組合などに直接、「傷病手当金支給申請書」を提出します。
傷病手当金が終了したらどうなる?
最長1年6ヶ月の傷病手当金が終了しても、体調が回復していなければすぐの就職は難しい場合もあります。そこで検討したいのが、「失業給付(雇用保険の基本手当)」です。
■ ポイント:就労可能な状態になってから申請
失業手当は、「就職の意思と能力がある人」に支給されるため、医師の判断で「働ける」とされることが必要です。つまり、傷病手当金の支給が終わってから、「就労可能」となったタイミングでハローワークに申請するのが通常の流れとなります。
■ 傷病手当金との重複に注意
傷病手当金と失業手当は同時には受け取れません。体調が回復し、失業手当を申請する際は、「待機期間(7日間)」や「自己都合退職の場合の給付制限期間(2ヶ月)」も確認しましょう。
上記からすると、傷病手当金支給終了後も、症状が長引いて働けない状態だと、収入が途絶えてしまうことになるのですが・・・
ハローワークでの「特定理由離職者」扱いに該当すれば
メンタル不調など健康上の理由で退職した場合、ハローワークでは「特定理由離職者」として認定されることがあります。この扱いになると、自己都合退職でも給付制限期間(2ヶ月)が免除され、早めに失業手当を受け取ることができます。
■ 申請の際に必要なもの
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退職理由が健康上の都合であることを示す診断書や医師の意見書
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離職票
ハローワークの窓口でまだ働けない事の事情を丁寧に説明することが重要です。
また、離職票には「自己都合による退職」とするだけでは、特定理由離職者としては認めてもらえないので、退職理由には、「一身上の都合により退職(うつ病により就労継続が困難となったため)」まで記載してもらい事が必要です。
そのうえで、病気のために退職したことを客観的に証明するため、主治医の診断書の提出を求められる場合もあります。
※診断書の提出まで求められない場合でも、ハローワーク指定の用紙「就労可否証明書」に、主治医の「まだ通常の就労は難しい」旨の記載をしてもらい、それをハローワークに提出することで、自己都合退職による給付制限期間が解除され、傷病手当金支給終了後、スムーズに失業手当給付の流れになります。
※上記の手続きとは別に、退職時にまだ傷病手当金を受給している場合は、重複して失業給付を受けることはできませんので、退職から30日後〜1年以内に「受給期間の延長申請」をしておくことも必要です。
その他に活用できる支援制度は?
以下のような制度も、状況によっては検討できます。
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障害年金:精神疾患が長期化し、働くことが難しい場合に支給される年金制度
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生活福祉資金貸付制度:低所得者世帯向けの一時的な生活費の貸付制度
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生活保護:他の制度で生活がまかなえない場合の最後のセーフティネット
上記の制度がありますが、生活福祉資金貸付制度は実質借金することになりますし、生活保護は車などの高価な資産は売却したり、貯蓄残高が極端に低いことが必要であったり、自治体によっては持ち家を手放す事を要求されるといった厳しい基準が定められているため、あまり現実的ではありません。
ですから、休職期間中に、障害年金の受給を主治医と相談することをお勧めします。
※障害年金が受給できる要件については、こちらの記事からご確認下さい。
まとめ:退職=無収入ではない。制度を上手に活用しましょう
うつ病等のメンタル不調で退職になっても、すぐに無収入になるわけではありません。
上記の通り傷病手当金 → 失業手当 と、状況に応じて適切に支援を受けることで、一定の収入を確保できます。
まずは「今の状態が傷病手当金の支給要件を満たしているか」「その後に失業手当の申請は可能か」を確認し、ハローワークや社会保険事務所に相談してみましょう。
また、休職期間中に、障害者手帳と自立支援医療制度はセットでぜひとも申請しておきましょう。
障害者手帳の申請には、心理的に抵抗があるかもしれませんが、ハローワークに障害者手帳を提示することで、通常の失業給付期間が3~4カ月のところを、45歳未満であれば300日に、45歳以上であれば360日まで当該期間を延長することが出来ます。
また、日々の治療費負担も軽減されます。
◆自立支援医療制度とは?
自立支援医療制度とは、メンタル不調などの精神疾患にかかる治療費の自己負担額を軽減できる制度です。
通常であれば、窓口負担3割のところ、自立支援医療制度を利用すると窓口負担が1割に軽減されます。
自立支援医療制度は「指定自立支援医療機関」と呼ばれる、都道府県または政令指定都市によって定められた医療機関でのみ利用することができます。すべての病院で利用できるわけではないので、注意が必要です。ここでの医療機関とは病院、診療所、薬局、訪問看護ステーションなどを指します。
申請する際は、通院している医療機関が「指定自立支援医療機関」に該当するか確認しましょう。通院している医療機関またはお住まいの市区町村の障害福祉課などの窓口で確認できます。
※自立支援医療制度の申請は、お住まいの役所にもよりますが、主に「健康づくり課」で受け付けています。
◆必要に応じて、専門家へ相談を
制度の適用条件は個人の状況によって異なるため、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーへの相談もおすすめです。不安な時こそ、専門家の力を借りることで安心につながります。
※当オフィスでは初回無料相談を受け付けております。お気軽にご相談ください。