
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に支障が出た場合に、経済的支援を受けるための公的制度です。
しかし、障害年金にはいくつかの請求方法があり、自分の状況に合った方法を選ばなければ適切に受給することはできません。
この記事では、特に「障害認定日請求」とそれに伴う「遡及請求」、およびそれに失敗した際の「事後重症請求への切り替え」について、詳しく解説します。
障害認定日請求(遡及請求を含む)
障害年金の請求手続きは、原則として初診日から1年6カ月を経過した日(障害認定日)の障害の状態を基準として行います。
請求の手続きには、障害認定日以降から1年以内の期間で、この期間に請求することを本来請求といいいます。
しかし、この本来請求が行われるケースはまれです。というのは、障害年金の存在を知らないまま治療を続け、何らかのきっかけで受給できると気づいて請求したときには、すでに障害認定日から何年も経過してしまっている、というパターンが多いのが実情です。
この様な場合に、本来請求の他に遡及請求という方法があります。
これは、障害認定日において障害の程度が障害等級に該当していた方が、しばらくの間請求を行っていない場合に、障害認定日までさかのぼって請求する方法です。
請求が認められれば、障害年金の時効は5年なので、直近5年分まで過去の支給分を請求し、一時金としてまとめて受け取れる可能性のある請求方法です。
この遡及請求を行うには、障害認定日より3カ月以内に診察した主治医の診断書に加えて、請求を行う時点での診断書も必要となることに注意が必要です。
◆遡及請求のメリット
遡及申請の簡単なイメージ図は下記のとおりです。
たとえば、35歳に障害認定日がある、現在46歳の請求者の場合はどうなるでしょう。
この場合は、障害認定日から3カ月以内の障害状態を証明する診断書を主治医に書いてもらい、それをもとに請求を行い、それが認められれば41歳時にさかのぼって障害年金の受給権が発生します。
障害年金の請求時効は、上記のとおり5年です。よって41歳より前の期間の年金は支給されませんが、それでも5年分の金額なので、障害厚生年金2級が認められれば、初診日の給与額によっては700~800万円程度になることもあります。
遡及請求する際の注意点
上記の遡及請求を行う場合、障害認定日から3カ月以内の症状が記載された診断書を書いてもらえるかがカギとなります。
障害認定日からしばらくの期間をおいて請求することになるため、障害認定日当時のカルテが残っていないという事が多いのです。
カルテの保存期間は5年間と定められており、医療機関によっては、最終受診から5年を過ぎるとカルテが破棄されてしまうことがあります。また、当時通院していた病院が廃院してしまっていたり、主治医が退職してしまっている事から、診断書を書いてもらえないケースもよくあります。
また遡及請求によってさかのぼれるのは、障害認定日時点となることにも注意が必要です。
例えば、15年前に初診日があり、その時点でうつ病と診断されたものの、1年6か月後の障害認定日時点では、症状が軽くなり、通院しながら就労していた、というケースがあるとします。
その後、症状が再び重くなり、現在から5年前の時点で就労に堪えられず退職する。
⇒現在も症状が重たいままで、就労できずにいる。
この様なケースでは、気持ち的には5年前までさかのぼってほしいところですが、障害年金の制度上、さかのぼることができるのは障害認定日時点のみです。
つまり、障害認定日の後に悪化して現在は重い障害があったとしても、障害認定日時点で等級外だった場合は遡及請求は認められないのです。
遡及請求について重要なポイントですので、十分に把握しておいてください。
遡及請求が認められると、上述したように一度にまとまった金額を受け取ることができ、経済的なメリットは大きいです。そのため、遡及請求をして少しでも多くの年金を受給したいと考えるのは自然なことです。
しかし、実務上はカルテが残っていない場合や、カルテがあっても内容が不十分な場合など、どうしても遡及請求ができないことがあります。
この場合は、後述する事後重症請求に切り替えるのがベターであるといえます。
事後重症請求
初診日から1年6カ月が経過した日(障害認定日)には障害年金を受けるほどの症状ではなかったのが、その後症状が悪化し障害等級に該当するようになった場合は、65歳の誕生日前々日までであれば、そのときに裁定請求することができます。
このことを事後重症による請求といいます。
これは、たとえば、障害認定日から3カ月以内に病院を受診していなかったり、上述したように受診していても当時のカルテが保存期間を過ぎて破棄されていた場合に行うものです。
事後重症請求では、請求が認められた場合でも「請求書を受理した日」が障害認定日となり、その翌月分から支給されることになります。
つまり、遡及請求のように過去にさかのぼって受給することはできないのです。
当該請求の場合は、請求日以前3カ月以内の症状で作成された診断書(1枚)が必要になります。
まとめ
上記に事から、スムーズな請求のためにやるべきこととして下記のことが挙げられます。
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障害認定日付近の医療機関に早めに相談し、診断書の取得が可能か確認
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遡及請求と事後重症請求の両方を見越した書類準備を行う
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自分のケースに合った請求方法を選ぶために社会保険労務士(社労士)への相談も検討
障害年金の請求は、「いつ・どの状態で」等級に該当していたかが大きく影響します。
障害認定日請求と遡及請求は経済的に大きなメリットがありますが、その分、厳格な証明資料が求められます。
万が一、遡及が認められなくても、事後重症請求で現在の状態をもとに年金を受けることは可能です。
👉 重要なのは、無理に遡及に固執せず、自分にとって最適なルートで早期に請求することです。
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