🧠職場ストレスでメンタル不調に陥った中高年男性への家族の接し方
~理解と支えが、再出発の力になる~
はじめに
中高年の男性が長年の職場ストレスにより心のバランスを崩し、休職や退職に追い込まれるケースは、近年ますます増加しています。
責任感が強く、長年家庭を支えてきた彼らにとって、仕事を離れることは「社会的喪失感」や「自尊心の低下」と直結し、その結果、日々深い無力感にさい悩まれられることになります。
そのようなとき、家族の接し方が心の回復と再スタートにおいて大きな鍵となります。
🗝 家族ができる5つのサポートポイント
①「治す」より「寄り添う」
精神的な不調は、風邪のようにすぐ治るものではありません。焦らず、**「良くなってほしい」ではなく「一緒にいるよ」**という姿勢が大切です。
例えば、「いつまで寝てるの!」とか「もう元気になったでしょ?」といった声掛けは、通常の日常生活を送ることも困難な状況で、ご主人の無力感を増幅させてしまう恐れがあります。
それよりもベターなのは、「あまり無理しないでね」とか「今日はどうだった」という具合に、さりげなく気にかけていることを感じさせるような声掛けの方が、ご主人の気持ちをひと時でも楽にさせる効果が見込めます。
② 孤独にさせない。でも干渉しすぎない
多くの中高年男性は、長年家庭を支えてきたプライドや仕事をしておらず稼ぎを得ていないという遠慮から、本音を語ろうとしない傾向があります。ご本人のそのような心境下では、過度な干渉や詮索は逆効果になることも十分にあり得ます。
そんな時は、**「そっと見守り、声がけはさりげなく」**を意識してください。
例えば、一緒にたわいのないバラエティー番組をみたり、その中で軽い雑談を交えるといったことです。
また、散歩や外食に「一緒に行かない?」と誘ってみることも、行くかどうかは別として、とても大事です。
特に20~30分の散歩は、気持ちを前向きにするのに効果できめんです。
※散歩の効用については、後日の記事で深く掘り下げていきます。
③ 価値を認める言葉をかける
社会的立場を失ったと感じている本人にとって、「まだ自分には価値がある」と思えることが、精神的な回復の糸口につながります。
何気ないひと時に、「お父さんが家にいるだけで安心するよ!」といった一言をかけることによって、ご本人の気持ちはずいぶんと楽になるものです。
④ 回復には波があることを理解する
家族とのコミュニケーションが増えて一時的に元気になっても、ちょっとしたことがきっかけで、退職に至ってしまった過去の経緯などを思い出し、また落ち込むことがあります。
そんな時は、
「良くなったのに、また…」とがっかりせず、ご本人の揺れ動く過程を受け入れる姿勢が大切です。
⑤ 家族自身も無理をしない
ご本人が退職されて、家にいる時間が長くなると、必然的にご家族が接する時間もふえます。
そうなると、ご本人に気を使う場面も当然必然的に増えていきますし、支える側も徐々に疲れてきてしまいます。
そんな時は、完璧なフォローを目指さず、専門家(心療内科、カウンセラー、地域の引きこもり支援センターなど)の力も借りるようにしましょう。
※「家族だけで抱え込まない」ことが原則です。
⑥収入がないときに使える制度
ご主人がうつ病などにより就労が出来なくなった時のための所得補償が、健康保険や雇用保険といった国による保険制度によって整備されています。
詳しくは、先日の記事をご覧ください。
「人生はお金ではない」という方もいますが、やはり定期的に入ってくる収入に勝る精神安定剤はありません。
メンヘル不調で会社を離れた後は、定期的な収入がなくなるうえに、病院の治療費・通院費などがかさんできます。
そんな時のために、健康保険の傷病手当金や、特定就職困難者による失業給付期間の延長で日々の生活をしのぎながら、同時に障害年金の申請も主治医の先生とご相談されることを強くお勧めします。
最後に:小さな一歩を大切に
本人が「また働きたい」と言い始めるまでには、相当な時間がかかることもあります。
一度社会の営みから外れてしまうと、またそこに戻ろうとするには、相当な勇気と覚悟が必要になるためです。
ですから、「また働きたい」と思うようになるには、日常生活をおくるうえで、身の回りのことはある程度こなせる様になる等の自己肯定する気持ちが芽生えてくる必要があります。
それには、家族との安らぎある日常が、必ずその土台になります。
あなた方の優しいまなざしと、「大丈夫」の一言が、ご主人の明日への希望につながるのです。